論文は,様式美である.
はじめて論文を書く修士学生向け.
全ての科学論文は,下のような流れで構成されている.
この構成を守っている文献を,論文と呼ぶ.
この流れから大きく外れる構成の文献は,論文ではない.
研究者が論文を大量に読むことができるのは、
すべての論文が基本的に同じ構成であることを理解しているため、
すべてを熟読しなくともどこに何が書いてあるかの推察が付くため、である.
生産性の高い研究者が論文を量産できるのは,ひとつに,
論文の執筆はこの構成に中身を放り込むだけの作業だと理解しているためである.
この構成で論文が構成されているということを知らないと、
論文を読むことすらままならない。
1.背景
- 社会的背景
- 研究分野における位置づけ
大きな視点から,小さな視点へ絞り込む.
2.目的
- この論文で解決したい問題
- これが出来たら、この研究は完了だと言えるもの
問題を大きく捉えすぎない.いくつも挙げない.一つの論文では、一つだけ.
3.関連研究
- 他の研究の紹介(必ずしも批判の必要は無い)
- 自分の研究との違い
4.理論(頭で考えたこと)
- 具体的な課題設定
- 解決手段
抽象度の高い概念。一般的に通用する応用可能な物。
5.実験(実際に手を動かしてやったこと)
- 実装
- 実験セットアップ
- 実験結果
- 考察
6.まとめ
- 1~5を簡単に
- 目的に対して結果はどうだったか
- 議論
- 今後の課題
文章のまとめ方について。
1段落ごとに、言いたいテーマは一つだけ。段落のあたまに、一番言いたいことを持ってくる。論文全体を通して、各段落だけのあたまだけを拾い読みすれば、話がおおよそわかるようにする。論文を書き終えた後の確認の際に、パラグラフの最初の一文をマーカーで引いて確認する。
論文の構成の中で一番重要なのは、目的である。
理論や実験は、すごい先端な研究であっても(凄ければ凄いほど)、数年程度のあっという間に、当たり前の技術になっている。
世の中の技術の進歩は、自分で思っているよりも、ずっと速い。
10年後、大半の論文の価値は、その何年の時点で、目的に書かれたその新しい問題に目を付けたやつがいた、ということだけになる。
一つの問題に対する解決方法は、普通、複数存在するので、自分の考えた解決方法が必ずしも最良の物とは限らない。
問題を明確化して提案すること、が論文の最大の価値である。
少年漫画のようなストーリーの論文が、一番面白い。
- 最初に、強大な敵(課題)が出てくる
- 弱小な主人公が、武器を手に入れたり、成長したり、で強くなる準備の段階が示される(理論)
- 戦う段階で、具体的にかっこいい姿がしめされる.思ったように戦えずやられてしまったりもするが、最終的には何とか敵をやっつける(実験)
- 苦労して敵を倒したと思ったら、更なる新しい強敵が出てくる
*1:様式美は、形式美の誤用