Finalイヤホンの研究(その1)E2000/E3000の勧め
Final E2000/E3000は、安くてとても音の良いイヤホンです。気に入りすぎて、耳は2つしかないのに、無駄にFinal[1]のイヤホンを買い集めてしまっています。この中で一番良いと思うE2000を推していきます。
(左上から、F3100, E3000, E2000CS, Adagio 5, Heaven4, 安いのばっかり)
良い点を列挙すると、
- 低音から高音まで周波数特性のバランスが良く、明瞭
- 4~5000円程度で安い
- 軽くて小さい
- シンプルでオーソドックスなデザイン
- イヤーピースが柔らかく優秀で、サイズ違いで5種類(LL/L/M/S/SS)が同梱されている
- ケーブルも普通に細くて柔らかい
- 川崎にある日本のメーカーの設計で2年保障。製造は中国。
もう一歩だと思う点は、
- 衣類などでケーブルを触ったときの音が届いてしまうタッチノイズが小さくない
- マイク・リモコン付きモデルのリモコン
音が良くて安い(ケーブル付き)イヤホンを探している人には、万人にお勧めできる良品です。
この中で特に、周波数特性のバランスが死ぬほど重要だということを説明してから、E2000/E3000の選び方と調整法を説明していきます。
理想の周波数特性
スピーカーの場合
HiFiオーディオでは、音楽ソースがカンペキに録音されたものだと仮定して、スピーカーやイヤホンはそれをそのまま再生できることが理想とされます。そのために周波数特性がフラットであることが重要だとされます。常識のように言われていますが、物理的な現象を踏まえて、何故なのかを簡単に考えてみましょう。大きくは2つあると思います。
距離減衰の影響
一定の大きさの音を出す音源を仮定すると、音の大きさは、音源からの距離が遠くなると小さく聞こえます。開けた空間では、距離の二乗で影響があります。
仮に、高音、低音、中くらいの周波数の音、のそれぞれの大きさがチグハグになっているとすると、それぞれから受ける距離感が、本来、同じ位置に存在しているはずの音源にもかかわらず、どこに存在しているのか分からなく曖昧になってしまいます。曖昧なだけならまだよいのですが、イコライザでめちゃくちゃにバランスを設定をしてみればすぐわかりますが、物理的に有り得ないような状況も簡単に作り出されてしまいます。
低音の量感は空間のひろさ
我々が暮らす実世界では、無響室でもなければ、壁や床などでの低音の反射の影響をかなり受けています。そして、人は低音の響きから経験的に空間の広さを類推する能力を備えています。
高音は、指向性が高いと言われます。指向性が高いというのは、真っ直ぐ進む性質が強いということで、障害物や壁などがあると大きく減衰します。一方、低音は指向性が低く、壁などにぶつかって跳ね返った反響音もあまり減衰せずよく聞こえます。(50Hzぐらいから下の低音では、目前のスピーカーでなっていたとしても場所を特定するのはなかなか困難です。)
実世界で耳に届く低音の音量は、空間の広さに影響されます。広い空間では、先の説明にもあるように距離減衰の影響が大きくなりますので、狭い空間に比べて低音も小さく聞こえるようになります。よくイヤホン視聴の感想で空間が狭いとか広いとかいう表現が使われますが、低音域と他の音域との音量バランスがこれの一因であろうと思われます。
以上から(ほかにももっとたくさんありますが)、スピーカーの理想の周波数特性はフラットであること、で良いと思います。(位相が大事、なんていう人もいますが、ほとんど無意味です。気が向けば、そのうち説明します。)
イヤホンの場合
イヤホンの場合は外耳道に設置することが普通です。外耳道は筒状になっているので共鳴菅現象が起きますが、外耳道の断面積や長さは人それぞれで違うので、共振周波数もそれぞれに違います。また、加齢によって耳の周波数ごとの感度もかなり変化します。したがって、イヤホン側の特性で一意にこれが理想な周波数特性であるとは言うことができません。
イヤホンで良い音を聞きたいと思ったら、各人で聴感上にフラットだと思う周波数特性を調整してやる必要があります。(HTC u11[2]やAUMEO AUDIO[3]のように面白い取り組みの製品もあります。)
イコライザを使うこと以外で一般にそれを解決する方法はあまり見つからないのですが、Finalイヤホンの場合、基本的にはもともとフラットに近い特性で、イヤーピースを交換するとわずかながら、低域の聴感を調整することが出来ます。
周波数特性をフラットに近づけることができると、音源の位置がくっきりとしてくるようになります。
Final Eシリーズの選択と調整法
E2000とE3000の周波数特性の聴感上の印象
E2000とE3000を比較したときの、周波数特性の聴感上の印象はこんな感じです。
あくまで、もうだいぶ耳が駄目になったおっさん個人の聴感上の印象ですので悪しからず。(だいぶ若ぶってグラフを書いていますが、高い音は明らかに聞こえていません。高音が伸びていないのは製品のせいではなく耳のせいです。)
E2000は、やや高音がつよく、E3000に比べれば低音の量感が抑え目な気がします。
E3000は、低音の量感がたっぷりで、高音はフラットかややくぐもる感じになります。
(くどいですが、おそらくこれは、中年の耳で高い音がちゃんと聞き取れなくなっていることの影響が極めて大きいだろうということを注記しておきます。ためしに若い子にE2000とE3000を聴いてもらったら、E3000の方が良いと言っていました。)
低音の量感の調整法
イヤホンで、大きすぎる低音の音圧を下げることは困難ですが、逆に上げることは僅かであれば簡単です。それは、
低音の量感を上げるには、イヤーピースを一つ大きなものに交換する。
です。イヤーピースで外耳道をふさぐ面積を増やして逃げないようにすれば、低音の量感は上がります。何の比較なのかわかりませんが、20%ぐらい増量する感じです。
他のメーカーの場合はそう簡単にできませんが、Final Eシリーズのイヤーピース(イヤホン本体とイヤーピースに同じEの名称が遣われていてときどき混乱します。E2000/E3000に付属しているのもEシリーズのイヤーピースです。)は、とても柔らかくあまり圧迫せずに、外耳道の形に合わせて変形してくれます。また、5種類のサイズが付いているので、1段階の大きさの違いはわずかですから、無理をせず選ぶことが出来ます。
自分の場合、イヤーピースを一回り大きくした補正後の聴感ではこんな感じで、ほぼ完ぺきになりました。
イヤーピースを小さくすると?
E3000の低音が強いなら、イヤーピースを小さくしてみればいいんじゃない?と思うかもしれませんが、ぴったりサイズから一段階落とすと取れやすくなってしまうので難しいです。また、大きく隙間ができると極端にスカスカな音になりがちです。
究極の選択。E2000とE3000のどっちを買えば良いの?
考え抜いた結論は、
- 安いから両方買えばいいじゃん。
なのですが、怒られそうなので、耳に自信が無い人(とくに40代以上の人)は、
E2000を買って、イヤーピースの大きさを吟味して低音の量感を調整する。
耳に自信がある若い人は、
E3000を買って、そのまま使う。
です。
E2000のエージング
1か月ぐらい使っていると、購入当初と比べて明らかに音が変わります。エージングの効果とか、にわかには信じらせませんが、新品と1か月使ったものを2台並べて聞き比べてみたところ、
・ボリュームが小さい時の、アタック感が3割増しぐらいになる
小さい音で聴いていても満足いくようになります。具体的には、iPhoneのボリューム4つ~5つで十分に感じます。
大きい音で聞いているときにはあまり差は感じません。
他にもなんか違うんだけど、うまく表現できません・・・。
おかしな表現だとは思うけれど、イヤホンがそこにある感じが減る、感じ。
リモコン付きと無しの違い、イヤーピースの裏側の色、リモコンの操作方法
リモコン付きモデルには、通話用マイクと1ボタンのリモコンが付いています。リモコン付きモデルのイヤーピースのRの裏側は、赤く色が付いています。リモコン無しモデルの場合は、両方とも色はグレーです。
iPhone 6S/6S Plus以前の場合のリモコン操作方法
<音楽の再生>
ボタン1回押し:再生・一時停止
ボタン2回押し:次の曲にスキップ
ボタン3回押し:前の曲にスキップ
ボタン2回押し→長押し:早送り
ボタン3回押し→長押し:巻き戻し<着信時>
ボタンを1回押し:通話開始<通話中>
ボタンを1回押し:通話終了
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- 出版社/メーカー: final
- メディア: エレクトロニクス
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余談
Finalのショールームに展示してあったE3000のバランス改造機がとても良かった。
(バランスドアーマチュアBAではありませんよ、ケーブルのマイナス側を分離して2.5mm4極端子にしたものです。)バランス化のメリットは、1にも2にもGND分離できるところにあります。
しょーもない遊び方
ちょっとボリュームを大きめにして、イヤホンのお尻の方を耳に近づけて聴くと、ちょっとPianoForteっぽい生々しい感じを楽しめます。
ももクロモデル
たぶん期間限定販売のももクロモデルのEシリーズが、カラフルなイヤーピースやケースなどの付属品がたくさんついて8980円で、とてもお買い得。
ももクロ×finalコラボ 杏果チューニングイヤホン
| 日テレ通販 日本テレビのショッピングサイト
(超人気みたい。欲しいけど、もものふではないので遠慮。)
[1] FinalはS'Nextという川崎の会社のオーディオブランドです。
snext-final.com
[2] 専用イヤホンのアクティブソナーで耳を計測して補正を掛けるHTC u11
HTC U11 | HTC 日本
[3] クラウドファンディングで一時注目を集めた香港のAUMEO AUDIO
聴覚測定アプリで音質を最適化!次世代ヘッドフォンアンプ「AUMEO AUDIO」 | クラウドファンディング - Makuake(マクアケ)
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